116法学研究 85 巻 12 号(2012:12) 政治学者が貿易政策を説明する際に注目する要因は、大別すると、貿易の開放性についての国内集団の選好、国内政治制度、および国際レベルのものと三つに区分できる。最後の国際レベルの主な要因としては、覇権、同盟、および国際制度がある( ( (。国際政治経済論では、まず、国際システムにおいて一つの国家が卓越したパワーを有する覇権状況の場合に、国際経済体制の安定性が最も高まるという考えが注目された。コヘイン(Robert Keohane)はそれを覇権安定論と名づけた( ( (。その後、覇権安定論への批判として登場した、同盟や国際制度といった要因から国際貿易を説明する理論が登場した。 本稿の前半では、貿易政策を説明する国際要因として覇権、同盟、および国際制度のそれぞれに焦点を当てた代表的な理論を概観し、次に後半で、第二次世界大戦後における国際貿易の持続的な拡大について、実証研究を紹介しながら簡単な考察を行うこととする。 一 貿易政策に関する国際政治理論 本節では、貿易政策を説明する、覇権理論、外部効果論、およびネオリベラル制度論の代表的な研究を概観する。 1 クラズナーの覇権理論 覇権安定論は、レイク(David Lake)によれば、指導力理論と覇権理論という二つの異なる理論からなる貿易政策の国際政治的要因︱︱覇権、同盟、および制度︱︱法学部教授 宮 岡 勲報告1117特別記事:平成二四年度慶應法学会シンポジウム 国際貿易の将来と外交研究プログラムである( ( (。指導力理論とは、公共財の議論を援用して国際経済の安定性に焦点を当てるものである。その代表作は、イギリスの衰退とアメリカの傍観者的態度から、一九二九年の世界大恐慌を説明しようとしたキンドルバーガー(Charles Kindleberger)の『大不況下の世界 1929︱1939』であろう( ( (。他方で、後者の覇権理論とは、国際経済の開放性を説明しようとするものである。覇権理論の代表的な研究は、クラズナー(Stephan Krasner)による一九七六年の論文「国力と国際貿易の構造」である( ( (。本項では、覇権と自由貿易の関係について検討することが目的であるため、以下、クラズナーの同論文に焦点を当てたい。 クラズナーの主張は、覇権国が優勢である時期に、開かれた貿易構造が出現しやすいというものである。ここで覇権国とは、貿易相手国よりもずっと大きく、比較的に先進的な唯一の国家のことをいう。国家規模が大きく発展水準の高い覇権国は、開放的な国際貿易を選好する( ( (。また、それを実現するための象徴的・政治的・経済的資源も利用することができる存在でもある。 クラズナーは、変数を具体的に定義して覇権理論を検証した。従属変数は、国際貿易体制の構造すなわち開放度であり、使用されるデータは、関税の水準、貿易の比率、および地域的貿易傾向である。これらの指標のデータを検討した結果、一八二〇年から一九七〇年までを五つの時期に区分している。他方で、独立変数は、国家間での経済力の分布であり、一人当たりの所得、集団規模、および世界貿易・投資での比率というデータが使用された。クラズナーによれば、従属変数と独立変数のデータの関係は、表1のとおりである。 覇権がより開かれた貿易構造をもたらすという仮説は、経験的証拠によって「完全ではないがそこそこ(fairly well, but not perfectly )( ( (」確認される、というのがクラズナーの総括である。従属変数と独立変数の関係が覇権理論の予想とは異なる、三つの期間(一九〇〇~一九一三年、一九一八~一九三九年、一九六〇~一九七〇年)については、覇権国の反応が遅れていると解釈した。すなわち、英国の開放的政策はその衰退後もしばらく続き、また、米国の開放的政策もその台頭後すぐには始まらなかったが衰退後もしばらく続いたとみているのである。このように覇権国の反応が遅れる118法学研究 85 巻 12 号(2012:12)原因として、クラズナーは、国内政治構造(制度)のために国外で重要な出来事が起こるまで変化が起きにくいと推測した。 クラズナーの本論文は、国際政治経済学のその後の研究に大きな影響を与えた。国際関係論の高名な雑誌『世界政治』の五〇周年記念号において、コヘインは、本論文のみをとりあげて、明快だが問題のある議論を提起したことにより後の国際政治経済学の発展を方向づけたことを強調している。クラズナーは、明らかな問いを投げかけたが、その問いに十分に答えることはできなかった。しかし、この論文は、国際政治経済の分野における、リベラルな国境横断主義者、国家を重視するリアリスト、およびそれらの信奉者の間で、実証的・理論的議論の的になることができたという( ( (。 2 ゴワの外部効果論 ゴワ(Joanne Gowa)は、論文「合理的覇権国、排除可能財、および小集団」(一九八九年)において、自由貿易協定が安全保障の外部効果を生み出すことを無視しているとして、覇権安定理論を批判した( ( (。貿易障壁を撤廃することは、自国と関係諸国の実質所得を増国際貿易体制の構造(従属変数)国家間での経済力の分布(独立変数)理論の説明力(検証結果)1820~1879年 増大する開放性英国の台頭十分1879~1900年 やや閉鎖的英国の衰退十分1900~1913年 より大きな開放性英国の衰退不十分1918~1939年 閉鎖的米国の台頭不十分1945~1970年 大きな開放性米国の台頭(~1960 年) 十分米国の衰退(1960 年〜) 不十分 表1 覇権理論の検証出所:次の文献より筆者作成。Stephen D. Krasner, “State Power and Structure of InternationalTrade,” World Politics, Vol. 28, No. 3, April 1976, pp. 317-347.119特別記事:平成二四年度慶應法学会シンポジウム 国際貿易の将来と外交大させることにより、軍事支出額にも影響を与え、関係諸国間の既存の勢力均衡を崩しうる。そこで、国際システムの無政府状態にあっては、国家はこのような安全保障への外部効果を考慮して貿易政策を形成していくと考えたのである。 ゴワの次の論文「二極、多極、および自由貿易」(一九八九年)は、安全保障への外部効果という視点から、国際貿易は軍事同盟内の方が同盟間よりも自由化されやすいが、さらに二極体制の方が多極体制よりも自由貿易の連合を生みやすいと主張した( (( (。その論拠の一つは、同盟の安定性(退出の費用)に関するものである。スナイダー(Glenn Snyder)の同盟のジレンマ論( (( (にもあるとおり、同盟国が離反するリスクは二極よりも多極の方が大きい。同盟国が寝返る恐れが自由貿易の可能性を低下させる。逆に、二極同盟はより安定しているので、同盟諸国間の相対的利得の違いを心配する必要性が低下する。 二極体制の方が自由貿易協定を結びやすい、もう一つの論拠は、同盟諸国間の搾取の問題である。市場を支配する力を有している独占企業から類推して、覇権国にとって最善の策は最適関税をかけることであるとコニビア(John Conybeare)は主張した( (( (。同じく独占企業の類推から、その主張に反論したのがゴワである。独占企業は、市場への新規参入を阻止するよう低めに価格を設定する。そのことと同じ論理で、長期的な利益を狙う覇権国は、市場の独占力を維持するために、最適関税ほど高い貿易障壁を設けないと考えられる( (( (。ここで市場の独占力を維持するとは、貿易条件に影響を与えることのできる唯一の国としての特権的立場を損ねてしまう対抗貿易圏の形成を阻止することを指す( (( (。また、二極構造では覇権国が同盟国の福祉(経済状況)に依存しているので、自己利益の定義がより利他的に行われるようになり、搾取への制約が強く働くようになることも、貿易が自由化されやすい論拠として挙げられている。 その後、ゴワは、マンスフィールド(Edward Mansfield)との共著論文「権力政治と国際貿易」(一九九三年)の中で、外部効果の議論をゲーム理論的に精緻化するとともに、一九〇五年から八〇年にわたるデータを使って仮説を検証した( (( (。その結果、自由貿易は同盟間よりも同盟内の方が起こりやすいという仮説と、多極システムよりも二極システムの状況において同盟は自由貿120法学研究 85 巻 12 号(2012:12)易連合に発展しやすいという仮説の両方が支持された。さらに、ゴワは、以上の諸論文の研究成果に、第一次世界大戦以前の英仏協商に関する事例研究などを追加して、主著『同盟国、敵対国、および国際貿易』を一九九四年に上梓している( (( (。 3 コヘインのネオリベラル制度論 コヘインは、ネオリベラル制度論の基本書となっている、彼の主著『覇権後 世界政治経済における協調と対立』(一九八四年)の中で、次の二点から覇権安定論を批判した((( (。第一に、覇権はある種の協調を促進するが、その十分条件でも必要条件でもない。第二に、国際レジーム(制度)が確立された後は、協調は覇権的指導国の存在を必ずしも必要としない。 国際レジームは、いくつかの機能を果たすことにより、覇権後の国際協調を促進する。まず、法的責任様式の確立である。国際レジームは、相手の行動様式について安定的な相互の期待を生み出すことができる。次に、取引費用の調整である。この機能により、ルールなどの再交渉の必要性がなくなる。そして、最も重要な機能が、対称的な情報の提供である。適切な国際制度があれば、情報の非対称性、モラル・ハザード、および無責任な約束という不確実性が低下するため、協調に向けて交渉をする誘引が生じる。 世界政府のない国際システムにおけるレジームは、分権的に執行される。レジーム形成の費用(埋没費用)が高いため、既存のレジームの価値が高く、維持される傾向にある。また、レジームのネットワークにより、報復、悪い前例の設定、および評判の悪化といった問題領域間のリンケージが促進される。以上の理由から、国際レジームは国家によって自発的に遵守されることが多い。  第二次世界大戦後における国際貿易レジームの中心は、互恵性・自由化・無差別を原則とする関税と貿易に関する一般協定(GATT)であった。貿易における覇権的協調が一九五〇年代に成功した後、六〇年代半ばから八〇年代初めにかけて、レジームの有効性が低下したものの、管理貿易に向けての協調は継続したとコヘインは主張した。国際協調は、必ずしも自由化や無差別化を意味するものではないというのである。ただ、コヘインは、「貿易形態は、自由主義を基本的に維持しながら保護主義が徐々に加味されるという形121特別記事:平成二四年度慶應法学会シンポジウム 国際貿易の将来と外交になった( (( (」とも記している。ラギー(John Ruggie)が主張するように、七〇年代以降の保護主義の動きは、第二次世界大戦後に確立された「埋め込まれた自由主義(embedded liberalism)」の妥協、すなわち多国間主義と国内の安定の両立という規範的な枠組みの中での変化に過ぎなかったと考えることもできよう( (( (。 二 国際貿易の拡大 第二次世界大戦後、国際貿易はほぼ右肩上がりで増えてきた( (( (。世界における財貨・サービスの輸出額が国内総生産に占める割合は、一九六〇年代半ば以降、とくに七〇年代と冷戦後において上昇傾向にある(図1参照)。本節では、覇権、同盟、および国際制度の各要因に着目する実証研究を取り上げながら、この上昇傾向について簡単に考察する。 1 覇権 覇権国と国際貿易の開放性との間に関係があるのかという実証面での論争がある( (( (。一方で、マキューン(Timothy McKeown)は、一八八一年から一九八七年までの期間における産業資本主義国家の貿易開放性に関する回帰分析を行った結果、貿易体制の開放性にとっての覇権国の重要性を否定した( (( (。確かに、クラズナーやコヘインが指摘したように、一九七〇年代の貿易の拡大は、覇権が相対的に衰退していた時期と重なる。他方で、マンスフィールドは、一八五〇年から一九六五年にわたる長期の統計的検証を行った。二つの最大の主要国の相対的な力の差(覇権)ではなく、すべての主要国の能力の不均衡の度合い(能力の集中度)に着目して、国際貿易との関係を調べてみたところ、U字型の関係が認められた。すなわち、貿易体制が開放的でありそうなのは、相対的不均衡が最も高い場合と最も低い場合である、というクラズナーの一九七六年論文の理論的立場と同一の結果が得られた( (( (。また、一八七〇年から一九九〇年までの期間を分析対象とする実証研究でも、覇権の言い換えである「体系的リーダーシップ(systemic leadership)」と世界貿易の開放性との間に双方向的な関係性が認められた( (( (。これら二つの研究だけで覇権安定論をめぐる論争が決着したわけではないことはいうまでもない。ただ、少なくとも冷戦後の時期については、アメリカの覇権の復活と考えれば覇権理論との整合性もあると考えられる。122法学研究 85 巻 12 号(2012:12) 今後、アメリカの再度の衰退あるいは「アメリカ以外のすべての国の台頭( (( (」が顕著になる場合、国際貿易にどのような影響を与えるのかが注目される。もちろん、貿易政策は、国内の政治や制度という要因によっても影響を受ける。そこで、覇権安定論に国内要因を組み込んだ理論を構築する必要がある( (( (。 2 同盟 前節で紹介したゴワの主著以外にも、同盟と貿易との関係を探る研究が存在する。例えば、マンスフィールドとブロンソン(Rachel Bronson)は、同盟が大国を含むだけでなく特恵貿易協定という制度も形成している場合に、二国間の貿易が最も盛んになるという仮説を一九六〇年から一九九〇年までの期間の統計分析によって実証した((( (。また、ゴワとマンスフィールドは、新貿易理論((( (が着目する規模の経済(収穫逓増)が当てはまる場合は同盟が貿易を促進するとの仮説を一九〇七年から一九九一年のデータを使って検証した。輸出市場の特性に合わせるために先行投資(固定費用)を行った輸出企業は事後の契約再交渉というリスク、すなわち「動学的不整合問題(dynamic-inconsistency◆◆◆◆◆◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆ ◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆◆◆◆◆ ◆◆ ◆ ◆◆◆◆◆◆196035(%)302520151050196219641966196819701972197419761978198019821984198619881990199219941996199820002002004200620082010図1 世界における財貨・サービスの輸出(国内総生産に占める割合)出所:World Bank, “Exports of Goods and Services (% of GDP),” http://data.worldbank.org/   indicator/NE.EXP.GNFS.ZS、2012 年6月20 日アクセス。123特別記事:平成二四年度慶應法学会シンポジウム 国際貿易の将来と外交problem)」を抱えるが、同盟諸国間ではそのリスクが低くなるからであるという( (( (。ただし、覇権理論の実証研究と同様に、以上の検証で使われているデータがほとんど冷戦終結前のものであることには留意する必要があるだろう。 貿易に対する同盟要因の影響力は二極構造の終焉とともに弱まったと考えられる。冷戦後の単極構造の下で、安全保障の外部効果の重要性が低下したことにより、東西陣営の垣根が取り払われ、国際貿易がグローバル化してきた。同じ観点から、米国の同盟国への自由化要求の高まりや、一九九〇年代前半における日米貿易摩擦の高まりも説明がつく。将来、国際システムが多極化する場合は、ゴワが説明するように自由貿易は安全保障上の理由から衰退するのであろうか。 3 国際制度 国際制度の形成が国際貿易を拡大してきたと一般的に考えられてきた。確かに、一九七〇年代や冷戦後における国際貿易の拡大は、GATTの貿易自由化交渉であるケネディ・ラウンド(一九六四~一九六七年)やウルグアイ・ラウンド(一九八六~一九九四年)、そして一九九五年にGATTを発展解消して設立された世界貿易機関(WTO)の影響があるように思える。 しかし、はたして本当に国際制度が国際貿易に影響を与えているのか。この問いに対する初の体系的な実証研究は、ようやく最近になって登場した。ローズ(Andrew Rose)による二〇〇四年の論文( (( (は、GATTやWTOが貿易に影響を与えている証拠はないと結論づけ、論争を巻き起こした。例えば、GATTとWTOはそれに加盟している最大の先進工業国の貿易だけに対して大きな肯定的影響力があったという説( (( (や、正式な加盟国以外の諸国や他の関連する貿易協定まで分析対象を広げることによりGATT・WTO体制の影響力を肯定的に捉える説( (( (、そして、貿易政策や貿易の流れにおける不安定性を低下させるという制度の機能によりGATT・WTO体制が通商量を増加させているとの説( (( (がこれまで出されてきている。 最近では、WTOで二〇〇一年に開始されたドーハ・ラウンドが〇八年に決裂したが、二国間・地域内の自由貿易協定(FTA)は増加している。この傾向については、GATT・WTO体制の中で加盟国が交渉力を高める手段として特恵貿易協定の締結を進めて124法学研究 85 巻 12 号(2012:12)きた可能性など( (( (、国際貿易に関する制度間の関係にも留意する必要があるだろう。(1) Helen V. Milner, “International Trade,” ChristianReus-Smit and Duncan Snidal, eds., The OxfordHandbook of International Relations, OxfordUniversity Press, 2008, pp. 448-461.(2) Robert O. Keohane, “The Theory of HegemonicStability and Changes in International EconomicRegimes, 1967-1977,” Ole R. Holsti, RandolphSiverson, and Alexander George, eds., Changes inthe International System, Boulder: Westview, 1980,pp. 131-162.(3) David A. Lake, “Leadership, Hegemony, and theInternational Economy: Naked Emperor or TatteredMonarch with Potential,” International StudiesQuarterly, Vol. 37, No. 4, December 1993, pp. 459-489. 両者の違いについては、次の文献でも言及されている。Duncan Snidal, “The Limits of HegemonicStability Theory,” International Organization, Vol.39, No. 4, Autumn 1985, p. 586; Michael C. Webb andStephen D. Krasner, “Hegemonic Stability Theory:An Empirical Assessment,” Review of InternationalStudies, Vol. 15, No. 2, April 1989, pp. 184-186.(4) チャールズ・P・キンドルバーガー『大不況下の世界 1929︱1939』改訂増補版、石崎昭彦、木村一朗訳、岩波書店、二〇〇九年。(5) Stephen D. Krasner, “State Power and Structureof International Trade,” World Politics, Vol. 28,No. 3, April 1976, pp. 317-347. 初期の代表作をもう一つ挙げるとすれば、次の文献となる。Robert Gilpin,U.S. Power and Multilateral Corporation, New York:Basic Books, 1975. ギルピンは、「覇権国は自由主義的な国際経済の存在にとって必要である」と主張している。ロバート・ギルピン『世界システムの政治経済学 国際関係の新段階』佐藤誠三郎、竹内透監修、大蔵省世界システム研究会訳、東洋経済新報社、一九九〇年、八九頁。(6) カー(E. H. Carr)は、「国際関係においても自由放任主義は経済的強者の楽園である。国家統制は、保護立法の形であれ保護関税の形であれ、経済的弱者によって行使される自衛の武器である」と述べている。E・H・カー『危機の二十年 理想と現実』原彬久訳、岩波書店、二〇一一年、一二八―一二九125特別記事:平成二四年度慶應法学会シンポジウム 国際貿易の将来と外交頁。(7) Krasner, “State Power and Structure of InternationalTrade,” p. 335.(8) Robert O. Keohane, “Problematic Lucidity:Stephen Krasnerʼs ʻState Power and the Structureof International Tradeʼ,” World Politics, Vol. 50, No.1, October 1997, pp. 150-170.(9) Joanne Gowa, “Rational Hegemons, ExcludableG o o d s , a n d S m a l l – G r o u p s : A n E p i t a p h f o rHegemonic Stability Theory,” World Politics, Vol.41, No. 3, April 1989, pp. 311-314.(10) Joanne Gowa, “Bipolarity, Multipolarity, andFree Trade,” American Political Science Review,Vol. 83, No. 4, December 1989, pp. 1245-1256. 次の文献も類似の議論をしている。Webb and Krasner,“Hegemonic Stability Theory,” pp. 196-197.(11) Glenn Snyder, “The Security Dilemma inAlliance Politics,” World Politics, Vol. 36, No. 4, July1984, pp. 461-495; Glenn Snyder, Alliance Politics,Ithaca: Cornell University Press, 1997.(12) John A. C. Conybeare, “Public-Goods, PrisonersDilemmas and the International Political-Economy,”International Studies Quarterly, Vol. 28, No. 1, March1984, pp. 11-12.(13) Gowa, “Rational Hegemons, Excludable Goods,and Small-Groups,” pp. 312-314.(14) Joanne Gowa, Allies, Adversaries, and InternationalTrade, Princeton, NJ: Princeton UniversityPress, 1994, p. 18.(15) Joanne Gowa and Edward D. Mansfield, “Power-Politics and International-Trade,” AmericanPolitical Science Review, Vol. 87, No. 2, June 1993,pp. 408-420.(16) Gowa, Allies, Adversaries, and InternationalTrade.(17) Robert O. Keohane, After Hegemony: Cooperationand Discord in World Political Economy,Princeton: Princeton University Press, 1984. ロバート・コヘイン『覇権後の国際政治経済学』石黒馨・小林誠訳、晃洋書房、一九九八年。(18) 同右、二二三頁。(19) John G. Ruggie, “International Regimes, Transactions,and Change: Embedded Liberalism in thePost-War Economic Order,” International Organi126法学研究 85 巻 12 号(2012:12)zation, Vol. 36, No. 2, Spring 1982, pp. 379-415.(20) Curtis Peet, “Declining Hegemony and RisingInternational-Trade: Moving Beyond HegemonicStability Theory,” International Interactions, Vol. 18,No. 2, 1992, pp. 101-127.(21) クラズナー自身は、ウェブ(Michael Webb)との一九八九年の論文の中で、覇権安定論が一九四五年以降の国際政治経済の傾向を説明できるか検証を行ったが、断定的な結論を導くことはできなかった。Webb and Krasner, “Hegemonic Stability Theory”.(22) Timothy J. McKeown, “A Liberal Trade Order?The Long-Run Pattern of Imports to the AdvancedCapitalist States,” International Studies Quarterly,Vol. 35, No. 2, June 1991, pp. 151-172.(23) Edward D. Mansfield, “The Concentration of Capabilitiesand International-Trade,” InternationalOrganization, Vol. 46, No. 3, Summer 1992, pp. 731-764.(24) Rafael Reuveny and William R. Thompson, “SystematicLeadership and Trade Openness,” InternationalInteractions, Vol. 29, No. 2, June 2003, pp.83-110.(25) ファリード・ザカリア『アメリカ後の世界』楡井浩一訳、徳間書店、二〇〇八年、一一頁。(26) そのような試みとして、次の文献がある。Peet,“Declining Hegemony and Rising International-Trade”; David A. Lake, Power, Protection, and FreeTrade: International Sources of U.S. CommercialStrategy, 1987-1939, Ithaca: Cornell UniversityPress, 1988.(27) Edward D. Mansfield and Rachael Bronson, “Alliances,Preferential Trading Arrangements, andInternational Trade,” American Political ScienceReview, Vol. 91, No. 1, Mach 1997, pp. 94-107.(28) 国際政治経済論の分野で新貿易理論に着目した初期の文献としては、次のものがある。Lake, Power,Protection, and Free Trade.(29) Joanne Gowa and Edward D. Mansfield, “Alliances,Imperfect Markets, and Major-Power Trade,”International Organization, Vol. 58, No. 4, Fall 2004,pp. 775-805.(30) Andrew K. Rose, “Do We Really Know That theWTO Increases Trade?” American EconomicReview, Vol. 94, No. 1, March 2004, pp. 98-114.127特別記事:平成二四年度慶應法学会シンポジウム 国際貿易の将来と外交(31) Joanne Gowa and Soo Y. Kim, “An ExclusiveCountry Club: The Effects of the GATT on Trade,1950-94,” World Politics, Vol. 57, No. 4, July 2005,pp. 453-478; Joanne Gowa, “Alliances, MarketPower, and Postwar Trade: Explaining the GATT/WTO,” World Trade Review, Vol. 9, No. 3, July 2010,pp. 487-504.(32) Judith L. Goldstein, Douglas Rivers, and MichaelTomz, “Institutions in International Relations:Understanding the Effects of the GATT and theWTO on World Trade,” International Organization,Vol. 61, No. 1, Winter 2007, pp. 37-67.(33) Edward D. Mansfield and Eric Reinhardt, “InternationalInstitutions and the Volatility ofInternational Trade,” International Organization,Vol. 62, No. 4, Fall 2008, pp. 621-652.(34) Edward D. Mansfield and Eric Reinhardt, “MultilateralDeterminants of Regionalism: The Effects ofGATT/WTO on the Formation of PreferentialTrading Arrangements,” International Organization,Vol. 57, No. 4, Autumn 2003, pp. 829-862.